第8回 Michiko & Yoichi meet Flying Professor Part I
- T. OSUMI

- Dec 6
- 9 min read
Updated: Dec 12

※第4回 回想グランビルアイランドーームール貝の記憶、第5回 コート・ダジュールの宝石ーームール貝を巡る旅の続きです。
1. チャッピー君の意外なマッチング
ホテルの朝食ルームは、大きな窓から朝日が差し込んでいた。
洋一と美智子は窓際のテーブルに座り、クロワッサンとカフェオレの朝食を取っていた。焼きたてのクロワッサンは外がサクサクで、中はしっとりとバターの香りがした。
「今日はマルセイユね」美智子がカフェオレを飲みながら言った。
「ああ。九時に出発すれば、昼前には着くだろう」
「その前に」美智子はスマートフォンを取り出した。「南フランスの観光情報、ちょっと調べてみるわ」
「ガイドブックじゃなくて?」
「今はチャッピー君に聞く時代よ」
「チャッピー君??」
美智子は慣れた手つきでスマホを操作し始めた。プロンプト入力画面に「ニース周辺で、沖縄からきているカップル向けのおすすめ観光地を教えて」と入力する。
いくつかのアドバイスと候補が表示される中で、美智子の目が一つのリンクに止まった。
「あら」
「どうした?」
「ちょっと待って」美智子は画面をスクロールしている。「これ、見て」
洋一が覗き込むと、ブログのようなページが表示されていた。タイトルには「Flying Professor's French Riviera Guide」とある。
「フライング・プロフェッサー?」
「作者の名前、見て」美智子が指差した。
Tamaki Osumi
「オスミ、タマキ?」洋一が読み上げた。
美智子はさらにページを辿った。プロフィール欄には、所属機関として「University of the Ryukyus」と書かれている。
「琉大?」
「みたいね」
二人は顔を見合わせた。
「まさか、同じ大学?」
美智子はさらにリンクを辿り、researchmapという研究者データベースのページを開いた。そこには詳細な経歴と業績のリストが掲載されていた。
「本当に琉大だわ。」美智子が画面を見ながら言った。「専門は...経営組織論に情報工学?」
「会ったことないな」洋一が首を傾げた。
「学部が違うものね。あなたは理学部だし」
ブログに戻ると、南フランスの様々な場所が紹介されていた。レストラン、ビーチ、美術館。写真も豊富で、詳細なコメントが添えられている。
「すごく詳しいわね」
「毎年来てるみたいだな」洋一が投稿日を見ながら言った。「去年も、一昨年も」
「研究で来てるのかしら」
美智子はさらにスクロールして、記事を読み進めた。ニースの旧市街についてはもちろんのこと、ビーチ近くのレストラン、モナコ、マントン、サン ポール ・ド・ヴァンス、そしてエズ村などが詳しく紹介されている。
「エズ村?」洋一が尋ねた。
「ニースとモナコの間にある、崖の上の村らしいわ」美智子が記事を読み上げた。「中世の面影を残す美しい村。地中海を一望できる展望台がある、って」
「面白そうだな」
「モナコも近いのね」
二人は黙ってブログを読み続けた。写真を見ると、確かに魅力的な場所ばかりだった。
「ねえ」美智子がふと言った。「この人に連絡取ってみない?」
「え?」
「おすすめの場所とか、聞いてみたら?」
洋一は眉をひそめた。
「いきなり見知らぬ人に連絡するのは失礼だろう」
「でも、同じ大学よ。それに」美智子はプロフィールページを見た。「年齢も近そうだし」
「それでも」
「ダメもと、でいいじゃない」
美智子はホームページをさらに探し、「Contact Us」というリンクを見つけた。クリックすると、連絡フォームが現れた。
「メールアドレスは載ってないけど、これなら送れる」
「ちょっと待て」洋一が止めようとしたが、美智子はもう入力を始めていた。
件名:南フランスについてのご相談
初めまして。私たちは琉球大学の卒業生で、現在南フランスを旅行中です。
たまたまあなたのブログを見つけ、とても参考になりました。
もしよろしければ、おすすめの場所などを教えていただけないでしょうか。
突然のご連絡で失礼いたします。
美智子・洋一
「ダメダメ」洋一が言ったが、美智子はすでに送信ボタンを押していた。
「送っちゃった」
「......」
「返事が来なければ、それまでよ」美智子は涼しい顔でクロワッサンを口に運んだ。
洋一は諦めて、自分のカフェオレを飲んだ。
五分ほど経った。
突然、美智子のスマートフォンがバイブで振動した。
「え?」
美智子は画面を見て、目を丸くした。
「返信?」
「もう?」
メールを開くと、短いメッセージが表示されていた。
ご連絡ありがとうございます!
琉大OB・OGの方でしたか。嬉しいです。
実は今、近くのアンティーブに滞在しています。
もしよろしければ、ZOOMでお話ししませんか?
こちらのリンクからどうぞ。
Tamaki Osumi
URLが添えられていた。
「アンティーブ?」洋一が驚いた。
「近くよ、ここから」美智子も驚いている。「車で三十分くらい」
「まさか、本当にこの辺にいるのか」
「ZOOMって、使える?」
「コロナの時、散々使っただろう」
「じゃあ、話してみましょうよ」
美智子はリンクをクリックした。

2. オンライン・ミーティング
ZOOMの画面が開き、待機室に入った。
数秒後、画面が切り替わり、一人の人物が現れた。
50代と思われる男性。オールバックにした黒髪。日焼けした顔に、穏やかな笑顔。背景には、明るい部屋と窓から見える海が映っている。
「こんにちは!」明るい声が聞こえた。
「こんにちは」美智子が答えた。「突然のご連絡、申し訳ございません」
「いえいえ、とんでもない。琉大の方とこんな形で繋がれるなんて、奇跡的です」
Osumiはきれいな標準語で話し始めた。
「私は古波蔵美智子と申します。こちらは夫の洋一です」
「洋一です。よろしくお願いします」
「オオスミです。お二人はニースに?」
「はい、昨日到着しました」
「いいですね。何日くらいのご予定ですか?」
「まだ決めてないんです」美智子が答えた。「二週間ほどのんびり旅行しようと思って」
「素晴らしい。で、今日はどちらへ?」
「レンタカーでマルセイユに行こうかと思っていたんですが」洋一が言った。「Osumiさんのブログを見て、もしかしたら近場も良いかなと」
「ああ、マルセイユもいいですけど」Osumiが笑った。「今日は超快晴なのでエズ村とモナコをお勧めしますよ」
「エズ村、気になってたんです」美智子が言った。
「絶対行くべきです。特に午前中がいい。観光客が少なくて、静かに楽しめます」
「モナコは?」
「午後ですね。エズから車で二十分くらい。カジノ見て、港見て、旧市街歩いて。今の時期は昼間が長いので十分楽しめます」
「ありがとうございます」洋一が言った。「ところで、オオスミさんは何でこちらに?」
「ああ、国際会議です」Osumiが答えた。「ソフィア・アンチポリスってご存知ですか?」
「いえ」
「アンティーブの近くにある、ヨーロッパ最大のテクノロジー・パーク。そこでAIの国際会議があって」
「なるほど」
「毎年この時期に来るんです。会議のついでに、南フランスを楽しんでます」Osumiが笑った。
「羨ましいですね」美智子が言った。
「いやいや、お二人のようにゆっくり旅行する時間が欲しいですよ。私は会議の合間を縫って動いてるので」
「ブログ、とても参考になりました」洋一が言った。
「ありがとうございます。自分の記録も兼ねて書いてるんですけどね」
「ムール貝の情報も、たくさんありましたね」美智子が言った。
「お好きですか?」Osumiの目が輝いた。
「ええ、それでこの旅を始めたんです」
「それは奇遇だ! 実は私もムール貝が大好きで」
洋一と美智子は顔を見合わせて笑った。
「じゃあ、この辺でおすすめのレストラン、教えていただけますか?」洋一が尋ねた。
「もちろん。エズ村には小さなレストランがいくつかありますが、正直ムール貝はイマイチです。観光地価格だし」
「そうなんですか」
「でも、モナコからニースに戻る途中に、ヴィルフランシュ=シュル=メールという港町があるんです。そこのレストランが最高ですよ」
「ヴィルフランシュ」美智子がメモを取り始めた。
「La Mère Germaine っていう老舗のレストラン。港のすぐそばで、新鮮な魚介類が素晴らしい。ムール貝も絶品です」
「ありがとうございます」
「あと」Osumiが続けた。「今日、もし時間があれば、夕方にどこかでお会いしませんか?」
「え?」
「せっかくの縁ですし。今日は会議が4時には終わるので」
洋一と美智子は顔を見合わせた。
「でも、ご迷惑では?」美智子が尋ねた。
「いえいえ、むしろ嬉しいです。琉大の話、久しぶりに聞きたいですし」
「じゃあ」洋一が言った。「ヴィルフランシュのレストランで、六時頃はどうですか?」
「完璧です! じゃあ、La Mère Germaineで。予約しておきますね」
「いいんですか?」
「もちろん。私の名前で予約しておきます。Osumiで」
「ありがとうございます」
「念のため店のURLをチャットに貼り付けておきますね。では、夕方お会いしましょう。Bon voyage!」
画面が消えた。
洋一と美智子は、しばらく呆然としていた。
「すごい展開ね」美智子が言った。
「まさか、本当に会えるとは」
「でも、良さそうな人だったわね。それに若く見える!同年代とは思えない」
「ああ」洋一も頷いた。「それに、情報も助かった」
「じゃあ、予定変更ね」美智子がスマホで地図を確認し始めた。「マルセイユは明日以降。今日はエズ村とモナコ」
「そして、夕方はヴィルフランシュ」
「楽しみだわ」
二人は朝食を終え、部屋に戻って準備を始めた。
予定外の展開。でも、それが旅の面白さだ、と洋一は思った。
3. エズ村への道
午前九時、二人はレンタカーでホテルを出発した。
ニースから東へ、海岸沿いの道を走る。右手には地中海が広がり、左手には崖が聳え立つ。道は曲がりくねっていて、時々対向車とすれ違うのに気を遣う。
「景色、すごいわね」美智子が窓から身を乗り出している。
「気をつけろ、落ちるぞ」
「大丈夫よ」
海は今日も青かった。昨日より少し風があり、白い波頭が見える。遠くにヨットがいくつも浮かんでいる。
「あれ、モナコかな」洋一が前方を指差した。
崖の上に、白い建物が密集して見える。
「まだエズじゃない?」
「わからないな」
カーナビを見ると、まだエズまでは少し距離がある。
十五分ほど走ると、「Èze Village」の標識が現れた。
「着いた!」
洋一は標識に従って、左折した。道は急に狭くなり、坂を上り始める。くねくねと曲がる山道。両側に石壁。ところどころ、家の壁にぶつかりそうになる。
「大丈夫?」美智子が心配そうに尋ねた。
「何とか」
さらに上ると、駐車場の標識が現れた。村の入り口の手前に、小さな駐車場がある。
車を停め、二人は外に出た。
空気が違った。涼しくて、乾いていて、どこかハーブの香りがする。
「高いわね」美智子が下を見た。
駐車場からでも、はるか下に海が見える。青い海と、白い建物と、緑の木々。
「すごい景色だ」
村の入り口に向かって歩く。石畳の道。両側には土産物屋やギャラリーが並び始める。
「もう観光地ね」
「オオスミさんは午前中がいいって言ってたな。人が少ないから」
確かに、まだ観光客の姿はまばらだった。
村に入ると、時間が止まったような感覚に襲われた。
狭い石畳の路地。石造りの家々。窓辺に飾られた花。アーチ状の通路。すべてが中世のままのようだった。
To be continued…
(注)今回は、第3回 回想グランビルアイランドーームール貝の記憶、第4回 コート・ダジュールの宝石ーームール貝を巡る旅の続編になります。せっかく生成型AIが洋一と美智子という架空のキャラクターを生み出してくれたので、海外の紹介の一部は、この二人に担当してもらいます。
私、Flying Professorとの遭遇編はかなり長いので、Part IからPart IIIまでの三部作に分割しました。生成された文章には結構間違いもあったので、可能な限り修正しています。また、私の撮影した写真を読み込ませて、細部の表現もよりリアルに近づくようにしてみました。




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