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第2回 AI時代の新キャリア「ブルーカラービリオネア」――新富裕層誕生

  • Writer: T. OSUMI
    T. OSUMI
  • 7 days ago
  • 9 min read

Updated: 22 hours ago



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プロローグ:逆転する価値観の中心で


配管工が年収10万ドル超。電気技師が自ら会社を興し億単位の資産を築く。エレベーター技術者が、MBA取得者より高い生涯賃金を手にする——。


これは未来のSFではなく、2025年のアメリカで現実に起きている物語です。エレベーター技術者は年間中央値で約10万2,420ドルを稼ぎ、ブルーカラー職種の中で最高水準の給与を得ています。配管工と電気技師の2023年の年収中央値はそれぞれ6万1,550ドルと6万1,590ドルで、ほぼ同水準ですが、独立開業や専門性の深化により、多くの技能者が10万ドルの壁を突破しています。


一方、大学卒業証書を手にホワイトカラーの道を歩んだ若者たちの中には、学生ローンに苦しみながら、AIに仕事を奪われる不安に怯える者も少なくありません。


この「価値の大逆転」は、単なる賃金統計の変動ではありません。AI技術の進化、労働市場の構造変化、そして人間の本質的な価値についての、根本的な問い直しなのです。


I:「ブルーカラー高収入化」現象の実態


現象の核心:なぜ今、技能職なのか


現在、技能職従事者の70%が労働力不足を深刻な問題だと認識しています。この人手不足が、賃金上昇の最大の原動力となっています。


米国労働統計局は2032年まで電気技師、HVAC技術者*、溶接工などの熟練労働者への需要が高止まりすると予測しており、インフラへの官民投資によって数万の雇用が創出されています。


2024年には、技能職における新規雇用の約25%を18〜25歳の若者が占めており、これは全体の労働人口のわずか14%であることを考えると著しい増加です。若い世代が、大学進学という「王道」から外れ、技能職へと舵を切り始めているのです。


さらに注目すべきは、高成長技能職における18〜25歳の若年労働者の賃金上昇率が全体平均を上回っているという事実です。これは実質賃金が増加していることを意味します。


*HVAC技術者というのは暖房(Heating)、換気(Ventilation)、空調(Air Conditioning)のシステムを設計、設置、保守、修理する専門家



「ブルーカラー・ビリオネア」の誕生


単なる高給取りではなく、真の富裕層に到達する技能職従事者も現れています。


ラリー・ジャネスキーは18歳で家を建て始め、現在では年間6億ドルの収益を上げる企業帝国を築き上げました。彼の会社は地下室の防水工事、這い回り空間の封入、湿気・カビ対策、住宅のエネルギー保存を専門としています。


CNBCの番組で紹介された6人の自営ブルーカラー・ミリオネア**に共通していたのは、自分自身を強く信じる姿勢でした。十分な時間と努力さえあれば、成功企業を築けると確信していました。


**6人の自営ブルーカラー・ミリオネア


-Dru Riess と Ray Salinas(印刷業)

納屋にあった古くて汚い印刷機を2,500万ドルのビジネスに成長させた

-Steve Hightower(石油ビジネス)

トイレ掃除の仕事から3億5,000万ドルの石油ビジネスを経営するまでに成長

-Rick と Bunny Lightsey(アリゲータービジネス)

Rickの父親の小さなアリゲータービジネスを百万ドル規模の事業に変革

-Bruce Schindler(象牙彫刻師)

アラスカのスカグウェイでツアーバス運転手として働きながら、マンモスの牙を採掘・彫刻する事業で自作ミリオネアに

-Mike Vetter(カスタムカー製作)

バーガーキングでハンバーガーを焼く仕事から始め、映画用カスタムカーやコンセプトカーを製作する自作ミリオネアに


II:なぜAIは技能職を奪えないのか


AIの限界が照らし出す「人間固有の価値」


生成AIは法律文書の下書き、コードの記述、データ分析などで驚異的な性能を発揮しています。しかし、技能職が持つ以下の要素は、現在のAI技術では代替不可能です。


1. 身体性と空間認識力


- 狭い天井裏での配線作業

- 壁内部の漏水修理

- 複雑な機械の分解・組み立て


これらは「人間の身体スケール」でしか対処できない仕事であり、ロボット工学がいくら進歩しても、コスト面・技術面で克服が難しい壁です。


2. 非定型的状況判断

現場では、マニュアルに載っていない無数の変数に対応する必要があります。


- 築50年の建物の配管と、最新のビルでは同じ「配管工事」でも全く異なるアプローチが必要

- 気候条件、他の設備との干渉、材料の経年劣化など、瞬時に総合判断して最適解を導く能力


これは「暗黙知」の領域であり、言語化してAIに学習させることが極めて困難です。


3. 顧客との信頼構築

技能職は単なる「作業員」ではありません。顧客の不安を理解し、専門知識を分かりやすく説明し、長期的な関係を築く「コンサルタント」でもあります。この対人スキルは、AIが最も苦手とする領域の一つです。


ホワイトカラーの「コモディティ化」


一方で、これまで高度とされてきた知的労働が、急速に価値を失いつつあります。


- 財務データの入力・分析

- 法律文書の初稿作成

- 基礎的なコーディング

- カスタマーサポートの定型応答


これらは、かつて「高学歴者の特権」とされた仕事でしたが、今や生成AIという「月額数千円のツール」で代替可能になりつつあります。


結果として、市場原理が働きます。供給過剰なスキルの価値は下がり、希少なスキルの価値は上がる。技能職の賃金高騰は、この単純な経済法則の帰結なのです。


III:なぜ日本で「ブルーカラー富裕層」は生まれにくいのか


日本にも世界最高峰の職人技術があります。しかし、アメリカのような急激な高収入化は起きていません。その理由は、構造的な問題に根ざしています。


理由1:硬直的な賃金制度と低い雇用流動性


2024年の春闘で日本企業の賃上げ率は5.2%と33年ぶりの高水準となりましたが、これは企業内での全体的な賃上げであり、個人の技能や市場価値に基づく劇的な差別化ではありません。


日本の労働市場の特徴:


- 年功序列の残存:勤続年数が賃金を決める主要因子

- 低い雇用流動性:2023年に転職した日本の雇用者は4.9%と、欧米諸国と比べて著しく低い

- 企業内組合の限界:職種全体の賃金水準を押し上げる力が弱い


優れた技能を持っていても、企業を離れて自分の市場価値を試す機会が少ないため、個人の技能が即座に賃金に反映されにくいのです。


理由2:根強い社会的先入観


日本では長年「大学進学=成功」という価値観が支配的でした。技能職には「3K(きつい・汚い・危険)」というネガティブなイメージが根強く残っています。


この固定観念が若者の流入を阻み、人手不足を加速させています。しかし皮肉なことに、人手不足が深刻であるにもかかわらず、社会的な「ステータス」の転換には至っていません。


理由3:教育訓練システムの未整備


アメリカでは短期職業訓練プログラムが充実しており、4年制大学よりも短期間で実践的スキルを習得でき、安定した長期キャリアへの明確な道筋を提供しています。


IV:AI時代における「大学で学ぶ意義」の再定義


誤解してはいけないのは、大学教育が無価値になったわけではないということです。むしろ、その価値の「本質」が変わったのです。


学位から本質に迫る「思考力」へ:大学の新しい価値


批判的思考力と問題設定力


AIは与えられた問いに対して最適解を出力できますが、「そもそも何を問うべきか」という本質的な問いを立て直す力は人間固有のものです。


AIが「A製品を開発すべき」と提案した際、以下のような問いを投げかけられる能力:


- データセットにバイアスはないか?

- 前提条件は妥当か?

- 市場は本当にこれを求めているか?

- 倫理的な問題はないか?


これは大学でのリベラルアーツや研究活動を通じて磨かれます。


最も価値を生むのは、異なる分野を組み合わせる能力です。イノベーションを生み出す能力と言ってもいいでしょう。まさに学際性と専門性の「掛け算」といえるでしょう。


この「理論×実践」の掛け算が、AI時代に高付加価値を生む源泉です。これに加えて、今後は「倫理」との掛け算も欠かせなくなるでしょう。


大学で得た複雑な理論や最新研究を、現場の「手の動き」に落とし込める人材、つまり研究と実践の「橋渡し」ができる人材は、企業や社会にとって極めて希少です。


エピローグ:新しい働き方の波を起こすのは、あなた自身


AI時代におけるキャリアの成功は、もはや「AIに奪われない職」を探すことではありません。


それは、「AIを道具として使いこなしながら、現場でしか磨けない技能と、大学で培う思考力を掛け合わせ、自己の価値を最大化する」ことです。


この記事で紹介したブルーカラー高収入化現象は、決して遠い海の向こうの話ではありません。技能職従事者の約90%が自分の職業に満足しており、同様の割合が同じキャリアを再び選ぶと答えています。


そして何より重要なのは、技能職の大多数は、人工知能が自分たちの仕事を置き換えることを心配していないという事実です。


あなたの選択と行動が、新しい働き方の波を生む第一歩となります。


今こそ、頭脳と技能を統合する「ハイブリッド・キャリア」の設計を始めてみませんか?


それは、大学に行くか行かないか、という二項対立の選択ではありません。


実践で価値を生み出しながら、理論で視野を広げ、AIを味方につけ、自分だけの希少性を市場で証明していく——


そんな、誰にも真似できない人生の航路図を、あなた自身の手で描くということなのです。


(注)今回は、テレビニュースや11月2日付の日本経済新聞にも紹介されたアメリカのブルーカラービリオネアについての記事です。その特徴から起業家的ブルーワーカーと言い換えてもいいかもしれません。まずは、新聞記事とYoutubeで公開されているテレビ番組の内容を参考にCopilotのThink Deeperで文章の素案を作成してみました。


内容が少し表層的だったので、もう少し具体性を持たせ深みが出るようにプロンプトを打ち込んで、文章全体をチェックしてみたところ、まだ公開するには不十分な出来栄え。そこで、出力された文章を創作に強いClaude(Sonnet4.5)を利用し、「最近の実情を調べた上で、この文章をもっと洗練され、分かりやすく、今後の生き方や働き方のヒントが得られるようなブログ記事にしてください。内容が少し表層的な箇所があるので、その箇所はもう少し具体的な説明を加えてください。」というプロンプトで出力してもらいました。最後に、全体的に統一性をもたせ、不要な個所は削除してもらいました。


なかなか良い出来栄えでしたが、ごく一部加除修正した方が良い箇所があったため、修正を加えたものが上記の記事です。もう少し手を加えるとさらに良い文章になりそうですが、今回はここまでにしておきます。(隙間時間に手直しするかも・・)その代わりに、Geminiに、大学に行かずに職業訓練校を選択するメリットとデメリットを一覧表にしてもらったので以下に紹介しておきます。キャリアを考えるヒントになるかと思います。


職業訓練校選択のメリット


職業訓練校選択のデメリット

コロナ禍の最中、エッセンシャル・ワーカーに注目が集まったことは記憶に新しいと思います。必要不可欠な職業にも関わらず、多くのエッセンシャル・ワーカーの労働条件は過酷で、賃金水準も非常に低いことが報道されました。フリーターも、ごく一部を除き低賃金に喘いでいるのが現状です。アメリカで台頭しているブルーカラービリオネアほどではないにしろ、日本のブルーワーカーやフリーターもヒントにしてほしい社会現象ではないでしょうか?日本の寿司職人が海外から引っ張りだこで年収が数千万になっているケースはあるものの、国内では夢のような話です。国のスタートアップ支援政策で起業数は増加しているとはいえ、長らく雇われることに慣れきったブルーカラーがいきなり起業を選択肢にすることはなさそうです。わが国ではブルーワーカービリオネアの誕生は見果てぬ夢なのでしょうか?寂しいなぁ。




 
 
 

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