第14回 インタビュー連載:フライング編
- T. OSUMI

- Dec 17
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Updated: 5 days ago
「飛んでる」杭 —— "Flying Professor" が語る、ルールを破る勇気とイノベーション

記者: 先生、前回は桜の花筏についての素敵なお話をありがとうございました。今回はもう少し先生ご自身のことを伺いたいと思っています。 実は、先生は以前から周囲で「Flying Professor(フライング・プロフェッサー)」と呼ばれていると伺いました。とてもユニークな呼び名ですが、一体なぜそう呼ばれるようになったのですか?
先生: (満面の笑顔で、まるで悪戯を見つかった子供のように) はっはっは! その話を聞きつけましたか。 自分から名乗り始めたのか、誰かが言い出したのか、今となっては定かではありませんが……気づいたらそう呼ばれていましたね。名誉ある称号だと思っていますよ。
記者: 名誉ある称号、ですか! その由来を教えていただけますか?
先生: 理由は3つあります。 まず第一に、文字通り「飛んでいる(Flying)」から。パンデミックの前は、渡り鳥よりも頻繁に世界中を飛んでいました。オーストラリア、シンガポール、ノルウェー、デンマーク、ドイツ等々……パスポートのスタンプは郵便局よりも多いくらいです(笑)。 第二に、頭の中が「飛んでいる」から。私の発想は、アカデミアの四角四面な枠には収まらないようです。「異端児」や「愉快なトラブルメーカー」なんて呼ばれることもありますが、哲学とテクノロジー、ビジネスとアートの境界線で踊るのが好きなんですよ。
記者: なるほど、物理的にも精神的にも「飛んでいる」と。では、最後の理由は?
先生: これが一番重要かもしれません。私が「フライング(Flying start)」をするからです。 陸上競技なら失格ですが、人生において「よーい、ドン」の合図を待つ必要なんてありません。面白い!と思ったら、正式な許可や予算が降りる前に、自分の判断で勝手に走り出してしまう。それが私のスタイルです。
記者: 許可を待たずに、ですか! まるで最近のスタートアップ企業の「リーン(Lean)な起業」のようなアプローチですね。
先生: まさにその通り! 失敗してもいいから、まずは小さく試してみる。うまくいかなかったらピボット(方向転換)すればいいだけのことです。日本の大学という巨大で保守的な組織の中で、私は一人で勝手に「大学内スタートアップ」をやっていたようなものです。ただ、やはり沖縄では早すぎたかも・・。
記者: (驚きと少しのため息混じりに) 先生、それは……私のようなサラリーマンには憧れですが、真似するのは難しそうです。日本の大学といえば、「出る杭は打たれる」典型のような場所ではありませんか? 縦割りの組織、前例主義、まさに官僚主義の権化……。よく定年まで「打たれ」ずに、あるいは辞めずにいられましたね。
先生: ええ、正直に言えば、何度も「辞めよう!」と思いましたよ(笑)。 先進的な大学に移ろうと何度考えたことか。日本の大学は、悲しいかな、官僚主義の要塞のようなところがあります。新しいことを始めようとすれば、「前例がない」「予算の根拠は」「失敗したら誰が責任を取るんだ」と、無数の壁が立ちはだかる。欧米の大学が、失敗を許容し、リスクを取ることを称賛する文化を持つのとは対照的です。 でもね、だからこそ私は大好きな沖縄を離れずに「フライング」する道を選んだんです。
記者: と、おっしゃいますと?
先生: 許可を求めてお伺いを立てれば、「No」と言われるに決まっている。だから、事後報告にするんです(笑)。あるいは、大学の外、企業や地域社会と勝手に手を組んで、既成事実を作ってしまう。 例えば、私が担当した産学連携もそうです。出張中に勝手に委員に任命されてしまったのが始まりですが、私はそれを逆手に取りました。文句を言う代わりに、それを研究テーマに変え、外部資金を獲得し、時代に先んじてイノベーションやアントレプレナーシップ教育のプログラムを独自に作り上げました。 「出る杭」は打たれますが、「出過ぎた杭」は打たれない。いや、もっと言えば「空を飛んでいる杭」は、そもそも誰も打てないんですよ。
記者: 「空を飛ぶ杭」……! 確かに、ハンマーも届きませんね。 そういった先生の姿勢は、今の日本の課題とされている「イノベーションの欠如」への一つの答えのように聞こえます。
先生: その通りです。日本からイノベーションが生まれないのは、能力がないからではない。「失敗に不寛容」「許可待ち」の文化が根強いからです。 若い学生たちにはいつも言っています。「準備ができるまで待つな」と。資格を取ってから、お金が貯まってから、偉くなってから……そんなことを言っていたら、チャンスは飛び去ってしまいます。 未熟でもいい、不完全でもいい。まずは「フライング」して、空中で翼を作ればいいんです。
記者: 先生のエッセイにある「La La La Learn」というAIを使った教育システム構想も、まさにその「フライング」の精神から生まれたものですね。
先生: ええ。私自身、日本の画一的な教育には苦しめられましたから。子供たちが「みんなと同じ」になることを強要され、個性を殺されるのを見るのは耐えられない。AIやデジタル技術を使えば、一人ひとりの「変なところ(Weirdness)」を伸ばす教育ができるはずです。 定年退職しましたが、私のフライング人生はこれからが本番ですよ。「インディペンデント・リサーチ・アーティスト(Independent Research Artist)」として、次はどのように飛ぼうかとワクワクしています。
記者:「えっ!?インディペンデント・リサーチ・アーティスト・・、ですか?」
先生: ええ、これからはそう名乗ることにしました。
記者:「アーティスト」ですか? てっきり「インディペンデント・リサーチャー(Independent Researcher)」の間違いかと思ったのですが……。一般的には、組織に属さない研究者はそう名乗りますよね?
先生: (ニヤリとして) ふふ、そこを突っ込んでくれましたか。もちろん間違いではありませんよ。私の造語です。 「リサーチャー」と言ってしまうと、どうしても既存の学問体系の中で論文を書く人、というイメージに収まってしまうでしょう? 私がやりたいのは、もっとこう、リサーチの世界そのものに揺さぶりをかけることなんです。
記者: 揺さぶりをかける、ですか?
先生: ええ。アートの分野で「スペキュラティブ・デザイン(Speculative Design)」という分野があるのをご存知ですか?これは一言でいうと、「SF映画の『小道具』を、現実の日常に紛れ込ませる」ようなものかな。 一般的なデザインが、世の中の不便を解消して「便利」にするためのものだとしたら、これはあえて「疑問」を投げかけるためのデザイン。「何が問題か分からない問題(Wicked Problem)」に挑むアートと言ってもいいかもしれません。
記者: 便利にするのではなく、疑問を投げかける……?

先生: そう。「もしも未来がこんな変なことになっていたら、君はどうする?」といった、ちょっと極端なシナリオや虚構のプロダクトを目の前に突きつけるんです。そうやって、私たちが無意識に信じ込んでいる「当たり前の現実」にヒビを入れる。 きれいな正解や解決策を渡すんじゃなくて、見た人の脳内に「えっ、これでいいの?」「ありえるかもしれない」という強烈な違和感や「問い」の種を植え付ける。そんな、アートとデザインの境界線にあるような刺激的なアプローチのことですよ。
記者: はあ……なるほど。「問い」を生み出すためのデザイン……。(まだ少し困惑した表情)
先生: まだピンときていない顔ですね(笑)。では、劇作家ジョージ・バーナード・ショーのこの言葉を補助線にしてみましょう。
「人々は存在する物事を見て『なぜ?(Why)』と問う。しかし私は、一度も存在したことのない物事を夢見て『なぜだめなのか?(Why not?)』と問うのだ」("You see things; and you say 'Why?' But I dream things that never were; and I say 'Why not?'" — George Bernard Shaw)
記者: 「Why」と、「Why not?」……。
先生: ええ。多くの研究者は、今目の前にある現実のデータを見て「なぜそうなっているのか(Why)」を分析します。それはとても大事なことです。 でも、私がやりたい「リサーチ・アーティスト」の活動は、後者なんです。まだここにはない、突飛な未来のビジョンを勝手に夢見て、「なぜそれをやってはいけないの?(Why not?)」と常識に問いかける。
単にデータを分析して正解を出すのではなく、教育や社会に対して「こういう未来もありえるんじゃないか?」という虚構を投げかけて、見た人の心をざわつかせたい。「正解」ではなく、この「Why not?」という「問い」を投げかけ続ける、という意味で、私は研究者であり、表現者(アーティスト)でありたいんですよ。
記者: (眉をひそめて少し考え込み) うーん……。なんとなく分かるような気もしますが、今ひとつピンとこないというか……具体的にどういうことなんでしょう?
先生: (記者を指差して豪快に笑いながら) はっはっは! いいよいいよ、悩まなくて! だってこれ、私の造語なんだから! 辞書に載っている言葉じゃないんだ、意味なんてこれから私が勝手に作っていけばいいんですよ。「なんか変なことやってるな」と思ってくれれば、それで大成功です(笑)。
記者: (つられて笑いながら) 先生らしいですね……。では、「リサーチ・アーティスト」としての最初のアクション、楽しみにしています。先生のお話をうかがっていると、組織の壁にぶつかって悩んでいるのが馬鹿らしくなってきました。私も少しだけ、フライングしてみようかな……なんて思えてきます。
先生: ぜひ! 一緒に飛びましょう。 せっかくなので今後の糧として私の大好きな詩人ルーミーの言葉を贈ります。 "You were born with wings, why prefer to crawl through life?" (君には翼があるのに、なぜ這って生きようとするのか?)
記者: 翼があるのに、這って生きる必要はない……。胸に刻みます。 本日は、型破りな勇気とエネルギーをありがとうございました。
(注)Geminiに英語ブログ掲載の"No.3 Birth of the Flying Professor: A Life Lived in Midair"を読み込ませ、日本の大学の実情について情報を整理してもらったうえで、インタビュー記事を作成してもらいました。
その後、内容を四コマ漫画にしてとプロンプトを打ち込んだところ、シナリオはきちんと仕上がったのですが、絵の吹き出し(会話)部分の日本語が支離滅裂&文字化けになっていたため、あらためてシナリオをCopilotのSmart(GPT-5)モードに読み込ませ、出力してもらいました。やはり、日本語の部分が少々乱れています。
【シナリオ】
「タイトル:フライング・プロフェッサーの新たな肩書き!?」
1コマ目 場面: インタビュー中の先生と記者。記者がエッセイの原稿を指さしている。 記者: 「先生、エッセイの最後に『インディペンデント・リサーチ・アーティスト』とありますが、これは……?」 先生: (ニヤリと笑顔)「ああ、それね。私の新しい肩書きだよ。」
2コマ目 場面: 驚く記者と、得意げな先生。 記者: 「えっ! アーティスト、ですか? てっきり『独立研究者』の書き間違いかと……。」 先生: (腕組みをして)「ふふ。私の造語なんだ。リサーチャーじゃ、どうも既存の枠に収まっちゃうからね。」 先生: 「例えるなら、SF映画の『小道具』を、現実の日常に紛れ込ませるようなものかな。」
3コマ目 場面: 比喩が分かりにくく、さらに困惑する記者と、楽しそうな先生。 記者: 「SF映画の小道具……? うーん、なんとなく分かるようで、今ひとつピンとこないです……。」 先生: (記者の肩をポンと叩きながら)「はっはっは! いいんだいいんだ、それで! 私の造語なんだから!」
4コマ目 場面: 諦めて苦笑いする記者と、どこか楽しげな先生。 先生: 「辞書に載る言葉じゃないんだ、意味なんてこれから私が勝手に作っていけばいいのさ!」 記者: (苦笑)「先生らしいですね……。では、その『リサーチ・アーティスト』の最初のアクション、楽しみにしています。」 先生: (自信満々に)「もちろんだとも!」





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